光合成する微生物を地下深くで発見-太古の地球で酸素を増やしたシアノバクテリア、暗闇の極限環境に生存の意味は?-

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スペイン南西部のイベリア黄鉄鉱ベルト地帯は、まるでエイリアン映画のセットのようだ。鉄を豊富に含んだ大地にさび色の湖が点在し、スペイン語で「赤い川」という意味のリオ・ティント川が、暗い色の岩石の間を縫いながら鮮やかな赤色に輝いている。だが、その足元にはさらに奇妙な世界が広がっていた。
この黄鉄鉱ベルトでボーリング調査を行い、岩石コアサンプルを取り出したところ、太陽の光も届かず、水や栄養も乏しい地下600メートル付近でシアノバクテリアが大量に見つかり、研究者らを驚かせた。シアノバクテリアは環境適応力が高く、地球上のあらゆる場所で見つかっているが、これまで太陽光がなければ生きられないと考えられてきた。この研究成果は、10月1日付けの学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。(参考記事:「シアノバクテリアはこんな微生物」)
「砂漠へ行っても海へ潜っても、シアノバクテリアを見つけることはできます。国際宇宙ステーションへ持って行って、生きたまま連れ帰ることだって可能です」。論文の筆頭著者で、スペインの国立生物工学センターの博士研究員であるフェルナンド・プエンテ・サンチェス氏は言う。
「見つけられなかった場所は、地下だけです」
■「博士号はもう無理だ」
スペインの宇宙生命学センターで大学院生として研究していたプエンテ・サンチェス氏は、最初からシアノバクテリアを探していたわけではない。研究チームは、岩石コアサンプルのなかから、鉄や硫黄を酸化させる微生物など、地表にいる細菌と似たような何かが出てくるだろうと期待していた。
しかし、その類のものは一切見つからず、代わりに岩の表面を覆う大量のシアノバクテリアを発見した。最初は、誤ってサンプルが汚染されたのかと思い、「博士号はもう無理だ。指導教官にめちゃくちゃ怒られる」と悩んだことを振り返る。
だが、比較用のサンプルのおかげで、微生物は汚染されて付着したのではないと結論付けられた。また、もしサンプルが汚染液にまみれたのであれば、シアノバクテリアはサンプルのどの場所で見つかってもおかしくはないが、実際は岩石の亀裂に沿ったわずかな空間に集中し、かろうじて生き延びていたのだ。
さらに、見つかったシアノバクテリアは今も生きていることが確認された。これには、細胞のなかの遺伝物質を特定できるCARD-FISH法と呼ばれる手法を用いた。細胞が死ねば、デリケートな遺伝物質はあっという間に崩壊してしまう。
シアノバクテリアが生きていることは分かったが、「ならばあんなところで一体何をやっていたのか、どうやって生存していたのかという疑問が持ち上がります」と、プエンテ・サンチェス氏は問う。
(省略)
■光合成の機能を再利用
米デラウェア大学微生物生態学者のジェニファー・ビドル氏は、今回の研究には関わっていないが、「もともと備わっている機能を大きく変えることなく適応するという、すぐれたやり方だと思います」と述べている。
一方、海洋・地下生物圏を専門とする微生物学者のバージニア・エッジコム氏は、光合成機能の再利用はそれほど意外なことでもないと語る。厳しい環境にすむ微生物は、生存するために高い適応能力を持っていなければならない。エッジコム氏もまた、研究には関わっていない。(参考記事:「海底下1万mに生命か、深海の火山から有機物」)
「有り金をすべて1カ所に投資するのはよくないのと同じです。制限された条件や、予測不可能な状況では、手に入るものを利用できるようにしなければ、生きていくのは難しいでしょう」
ビドル氏もエッジコム氏も、過去に地下から採取したコアサンプルのなかにシアノバクテリアの痕跡を認めたことはあるものの、何かの汚染で入り込んだのだろうと思って詳しく調べたことはなかったという。
「この研究が発表される前は、地下生物圏サンプルのシアノバクテリアが汚染されたものではないことを示す有力な証拠はあまり存在しませんでした」と、エッジコム氏は言う。
■火星に存在の可能性は
プエンテ・サンチェス氏は、地球外生命体の探査にもこの研究が役立つかもしれないと期待する。特にリオ・ティント川周辺は鉄や硫黄が豊富で、火星の環境に似ているといわれている。
この研究は生命の適応力の高さを裏付け、破壊的な放射線にまみれている火星の地表を避けて地下に生命が息づいている可能性を示唆している。2020年には、火星で生命の痕跡を探すために欧州宇宙機関のエクソマーズと、NASAのマーズ2020が打ち上げられる。どちらも、太古の微生物の痕跡を探す目的で岩石コアを採取するドリルを搭載しているが、もしかするともっと最近の生命の痕跡も発見できるかもしれない。
「火星にシアノバクテリアがいると言っているわけではありません」と、プエンテ・サンチェス氏は言う。ただ地球外にどんな生命体が発達し、生存できるかについて、今よりももっと思考を広げて考えるべきだと話す。
「地下や火星などの極限環境でも、生命は存在しうるということです」

穴瀬博一

Source: 生物の歴史

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