アビーと白いバラ

(日記)

アビーと白いバラ

野良猫のアビーがここへ現れて、友人宅へ車で移送した日から、一週間が経った。

友人の山荘は、人里離れた小山の南斜面にあって、自然がいっぱいで、車はほとんど通らなかったから、動物たちには幸せな場所なはずだ。あやうく「保健所行き」だったアビーだったが、家の後ろのハウスを寝場所に与えらえて、今はきっと自由に林の中を探検しているだろう。

のびのびと生きているアビーを想う度、私はほっとする。

あの時、ネコをこの腕に抱えねばならない瞬間が二度あった。
アパートの部屋から車に乗せる時と、到着して車から降ろす時だ。

私の両方の肘は、リュウマチで炎症を起こしていたが、その時はとにかく私が抱えねばならない状況だったので、思考を止めてヤルことをやった。抱えた瞬間に激痛が走り、後のことがちらっと浮かんだが、後悔はしない、と思った。

一週間がたち、私の両腕は、恐れていた通りに大変な状態になった。
もともと痛めていた両肘の関節の腫れが増してしまったのだ。

また、以前炎症が起きてやっと腫れがひいていた両手首も痛めて、腫れだした。
おまけに肩と、手の指の細かい関節も腫れて、私の両腕は腫れに腫れてしまった;

歯ブラシやスプーンを口に持って来ることがいよいよ困難になった。両腕にシップをした姿は、まるで、肘の曲がらない腕を伸ばしたロボットのように滑稽に見えた。生活は本当に不便になってしまった。
食事をどうしようかとほとほと困ったが、冷凍していたスープとご飯をミキサーにかけて、軽くて大きなコップに入れて、数回で口に入れられるよう、工夫している。
そのうち、食器を洗う手間を省くために、紙コップや紙皿を購入するつもりだ。 

できないなりに、智恵が浮かんでくる自分に可笑し味も感じるが、やはり先の不安を考えてしまい、気持ちはどんどん落ち込んでいた。母への訪問もできず、今の自分が家族に何も力になれない自分が情けなかった。

障子を閉めて、ベッドで横になっていたが、たまに起きて少し体を動かす。

昨日今日と、外の日差しがとても強い。外は、もわーと空気が熱いほどだ。

小さいサンルームから外を見ると、雲がない青い空だった。
窓の側には白いつるバラの花がたくさん咲いていた。

5月の中旬から咲き始め、家族や友人へ、今年もたくさんそのバラを切って届けた。
今年もよく花がついて、いまもたくさんの蕾がみえる。

昔、本当に体調が悪かった頃、冬でも少しの日差しをもとめて、窓の側で良く日光浴をした。
それを思い出して、今日はここで日光浴をしようと思った。
太陽を浴びたら、少しは元気になれるかなと期待して。

籐椅子を窓辺に引き寄せて、風でゆらゆらと揺れているバラをぼーっと眺めた。
外はものすごい暑さだ。ここ数日、雨がないから、植物たちは大変だ。
腕が痛くなければ、ホースで水やりをしてやるのだけれど。

ごめんね、と すまなく思った。

ぼーっと眺めていると、一輪だけこちらを向いているバラの花があった。

もうすぐ散りそうな。花の芯が座っているところから丸々見えて、
まるでヒマワリのような形のバラだった。

風が通るたび、ゆらゆら揺れる。

すまない、すまない、と、心の中で思っていたら、
そのバラが、私の気持ちに答えて、揺れて頷いているように見えた。

なぜか、「いいんだよ、いいんだよ」と、言っているように見えた。

感情が湧いて、
私は泣いてしまった。

バラの側で、お昼を食べた。
日差しも、バラたちの白い反射も目に 気持ちが良かった。

美しいなあ、きれいだなあ。
つくづくと、バラの造形の美しさに見入っていた。

規則正しく形作られている物質の配列でつながっているものは、きっとこんな風に美しくみえるのだ。私たちと植物たちが美しい配列の物質同士でつながっているもう一つの世界を思い描いてみた。
植物と人間が つながっているイメージだ。 

その時ふっと心に浮かんだのだ、
妹に私のメッセージを伝えてくれたのは このバラたちかもしれない、と。

あの時、野良猫のアビーを助けたくて
「どうか、助けて下さい!」と 心の中で叫んだが、その瞬間、妹から電話が来た。
休みで自宅にいた妹の庭には このバラと全く同じ種類の白いバラがあった。
そうそう、刺し芽して増やしたラベンダーもあった。

私の心の叫びを受けて、私の庭のバラたちが、妹の庭のバラへとメッセージを送ってくれた?ふと、そんなことが浮かんだのだ。
揺れる白いバラを眺めていたら やって来た閃きだった。 

私は 否定しないことにした。

バラがメッセージを伝えてくれた、
という嬉しい認識は大事に育てたいと思ったのだ。

今日は 結局いい一日だった。

ゆっくり バラを眺める時間をもってよかったと思った。

2019.5.27.1


Source: OurPlanetEarth http://blog.livedoor.jp/sagittariun/